第4章 盟約 3
2008/12/01/Mon
第4章 盟約
3
「今回のことにはゾラスリアが関与している可能性が高いということだな。目的は何だと思う?」
ジャルラーズはセリカの頭を撫でるジェリッツをイライラとした様子で見つめながら、しばらく無言で考え事をしていたユーリスに向かってそういった。
「そうですね。王弟、王太子を不祥事によって王のそばから排除する。その後、王を殺せば我が国にとっては大きな痛手になりますね。
それに、あなたも殺してしまえば、王位に継ぐ者を遠縁から探さねばならなくなるでしょう?
それが元で王権争いが起こるかもしれません。その機に乗じて一気に攻め込めば・・・・・・精霊魔法士に守らせたとしてもこの国は持たないでしょう。
結界の強化もすんでいませんし、ね」
顎に手をあてて、ユーリスは考えを述べる。
「そうだ。その通りだな。今回の事件が発覚すれば、王弟はおそらく捕らえれるだろう。エリクとて無事ではすまない。王のそばからは遠ざけられるだろうな」
ジャルラーズはユーリスの意見にうなずいた。
「じゃあ、赤毛の女はエリクバルドを嵌めるために彼の侍女として潜入しているってこと?」
「そうかもしれない」
セリカの問いにジャルラーズは自信なげに言う。赤毛の女の行動はいまいちよく分からないのだ。
10年前も殺そうと思えば殺せたのに、神賜巫女を殺しただけで同行していたグラン王を殺さなかった。
今回も侍女として入り込んでいるので、グラン王を殺せる機会はいくらでもあるだろう。しかし殺さない。
「とりあえず、王城に行きましょうか。口封じまでしようとした彼がこちらの手の内にいることを知られたら王の命が危ないかもしれません」
ユーリスはそういってヨールバシェルを見た。
たしかに、全てとまではいわないが今回のことをかなり詳しく知っているヨールバシェルがここにいると知られれば、エリクバルドもジサラットもウィンターナー卿とジャルラーズが事件の全貌を知ったと思うだろう。
例の事について調査中のウィンターナー卿と王位継承二位のジャルラーズが事件のことを知ってしまえば、自分の立場を危ぶんだ王弟と王太子が何をしでかすか分からない。
そのことに気づいたウィンターナー卿は勢いよく立ち上がると、一足先にと言い残し部屋を出て行った。
「なんか、私はここにいる全員を信用してるけどエリクバルドはそれが出来なかったってことなんだよね」
「セリカ・・・・・・それは、王家や7貴族に生まれたら仕方がないことかもしれない。でも、だからこそ俺はセリカが言うようにみんなを信じるということが大事だと思う」
「そう、そうだよねラーズ。人を陥れたり裏切ったり、そういうのって嫌だもん」
そういって父を追うために椅子から立ち上がろうとするセリカをリーリアが止める。
「ねぇ、盟約を結びましょう?」
彼女は目を伏せたままいった。
「私たち、神賜巫女の名のもとに盟友の誓いをするのよ。決して裏切らないために」
しかし、その言葉にセリカが首を傾げる。
「私の?身分的にいってラーズ・・・・・・王子の名のもとなんじゃないの?」
するとリーリアが顔をしかめる。
「なんで、誰が殿下なんかの名の元に誓わなきゃならないのよ?こんな優柔不断男、お断り」
「な?!」
静かに聞いているかと思ったジャルラーズだったが、優柔不断といわれ反応する。
しかし、リーリアのひと睨みの前に声は小さくなり、ぶつぶつと呟くに留まる。
ジャルラーズはリーリアの婚約者にされていたころから彼女の押しの強さは苦手のようだった。
「それに、みんなを信用したいって言ったのはセリカでしょ?」
「僕も、神賜巫女に誓うほうが殿下よりはるかにいいな」
どんな女の子もうっとりとする甘い笑顔を浮かべたジェリッツがセリカに目をやる。
「つまり、セリカ。君の名のもとにだから僕たちは誓うんですよ」
ユーリスがはじめてセリカに対し丁寧な言葉をつかう。
この部屋にいる全員がセリカを認め、彼女がみんなの心を一つにしたのだ。
それを見たユーリスはセリカを神賜巫女として、自分の主人として認めることにしたようである。
「セリカ、忘れるな。お前を護る。絶対に裏切らない」
ジャルラーズが全員を一度見回してからセリカの手を取った。
「それにお互い助け合うのよ」
リーリアがその上に手を重ねる。
「そうですね。そして信頼と言う言葉こそが私たちにはふさわしい」
ジェリッツが手を重ねる。
「では、私はその盟約を護るため、せいいっぱい働かせていただきます」
ふかぶかと頭を下げるルディスの手を取り、リーリアは一番上に乗せた。
「では、僕も持てる力全てで皆さんのサポートをしますよ」
そういってユーリスがルディスの上から手をかぶせる。
セリカは頷いた。
――私も、確かに聞きましたよ。
「では、行こう」
ジャルラーズがいうと、今度こそみんな王城へ向かうため立ち上がった。
「あ?」
窓の外をふとみたリーリアが声を上げる。
「え・・・・・・?」
せりかも言葉なく同じほうを見る。
王城の、ちょうど王の部屋のある辺りから煙が出ていた。
...to be continued.
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「今回のことにはゾラスリアが関与している可能性が高いということだな。目的は何だと思う?」
ジャルラーズはセリカの頭を撫でるジェリッツをイライラとした様子で見つめながら、しばらく無言で考え事をしていたユーリスに向かってそういった。
「そうですね。王弟、王太子を不祥事によって王のそばから排除する。その後、王を殺せば我が国にとっては大きな痛手になりますね。
それに、あなたも殺してしまえば、王位に継ぐ者を遠縁から探さねばならなくなるでしょう?
それが元で王権争いが起こるかもしれません。その機に乗じて一気に攻め込めば・・・・・・精霊魔法士に守らせたとしてもこの国は持たないでしょう。
結界の強化もすんでいませんし、ね」
顎に手をあてて、ユーリスは考えを述べる。
「そうだ。その通りだな。今回の事件が発覚すれば、王弟はおそらく捕らえれるだろう。エリクとて無事ではすまない。王のそばからは遠ざけられるだろうな」
ジャルラーズはユーリスの意見にうなずいた。
「じゃあ、赤毛の女はエリクバルドを嵌めるために彼の侍女として潜入しているってこと?」
「そうかもしれない」
セリカの問いにジャルラーズは自信なげに言う。赤毛の女の行動はいまいちよく分からないのだ。
10年前も殺そうと思えば殺せたのに、神賜巫女を殺しただけで同行していたグラン王を殺さなかった。
今回も侍女として入り込んでいるので、グラン王を殺せる機会はいくらでもあるだろう。しかし殺さない。
「とりあえず、王城に行きましょうか。口封じまでしようとした彼がこちらの手の内にいることを知られたら王の命が危ないかもしれません」
ユーリスはそういってヨールバシェルを見た。
たしかに、全てとまではいわないが今回のことをかなり詳しく知っているヨールバシェルがここにいると知られれば、エリクバルドもジサラットもウィンターナー卿とジャルラーズが事件の全貌を知ったと思うだろう。
例の事について調査中のウィンターナー卿と王位継承二位のジャルラーズが事件のことを知ってしまえば、自分の立場を危ぶんだ王弟と王太子が何をしでかすか分からない。
そのことに気づいたウィンターナー卿は勢いよく立ち上がると、一足先にと言い残し部屋を出て行った。
「なんか、私はここにいる全員を信用してるけどエリクバルドはそれが出来なかったってことなんだよね」
「セリカ・・・・・・それは、王家や7貴族に生まれたら仕方がないことかもしれない。でも、だからこそ俺はセリカが言うようにみんなを信じるということが大事だと思う」
「そう、そうだよねラーズ。人を陥れたり裏切ったり、そういうのって嫌だもん」
そういって父を追うために椅子から立ち上がろうとするセリカをリーリアが止める。
「ねぇ、盟約を結びましょう?」
彼女は目を伏せたままいった。
「私たち、神賜巫女の名のもとに盟友の誓いをするのよ。決して裏切らないために」
しかし、その言葉にセリカが首を傾げる。
「私の?身分的にいってラーズ・・・・・・王子の名のもとなんじゃないの?」
するとリーリアが顔をしかめる。
「なんで、誰が殿下なんかの名の元に誓わなきゃならないのよ?こんな優柔不断男、お断り」
「な?!」
静かに聞いているかと思ったジャルラーズだったが、優柔不断といわれ反応する。
しかし、リーリアのひと睨みの前に声は小さくなり、ぶつぶつと呟くに留まる。
ジャルラーズはリーリアの婚約者にされていたころから彼女の押しの強さは苦手のようだった。
「それに、みんなを信用したいって言ったのはセリカでしょ?」
「僕も、神賜巫女に誓うほうが殿下よりはるかにいいな」
どんな女の子もうっとりとする甘い笑顔を浮かべたジェリッツがセリカに目をやる。
「つまり、セリカ。君の名のもとにだから僕たちは誓うんですよ」
ユーリスがはじめてセリカに対し丁寧な言葉をつかう。
この部屋にいる全員がセリカを認め、彼女がみんなの心を一つにしたのだ。
それを見たユーリスはセリカを神賜巫女として、自分の主人として認めることにしたようである。
「セリカ、忘れるな。お前を護る。絶対に裏切らない」
ジャルラーズが全員を一度見回してからセリカの手を取った。
「それにお互い助け合うのよ」
リーリアがその上に手を重ねる。
「そうですね。そして信頼と言う言葉こそが私たちにはふさわしい」
ジェリッツが手を重ねる。
「では、私はその盟約を護るため、せいいっぱい働かせていただきます」
ふかぶかと頭を下げるルディスの手を取り、リーリアは一番上に乗せた。
「では、僕も持てる力全てで皆さんのサポートをしますよ」
そういってユーリスがルディスの上から手をかぶせる。
セリカは頷いた。
――私も、確かに聞きましたよ。
「では、行こう」
ジャルラーズがいうと、今度こそみんな王城へ向かうため立ち上がった。
「あ?」
窓の外をふとみたリーリアが声を上げる。
「え・・・・・・?」
せりかも言葉なく同じほうを見る。
王城の、ちょうど王の部屋のある辺りから煙が出ていた。
...to be continued.
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